ハービー・山口『良い写真とは? 撮る人が心に刻む108のことば』

4.5
読書

こんにちは。今回は写真家ハービー・山口さんの写真論にまつわるツイートと、撮影されてきた写真を集めた、『良い写真とは? 撮る人が心に刻む108のことば』を紹介いたします。

ハービー・山口さんの書かれた文章も読みたいが、どのような写真を撮られてきた人なのか、という歴史も同時に読みたい人にオススメいたします。

概要

文章は短く平易ですので、撮影を始めたばかりの人も読める本ではあります。

しかし内容の理解が進むのは、写真撮影をある程度できるようになったが思うように撮れていないと感じる人が、内容を理解しやすいと思います。初心者から一歩前に進んだ人向けの本です。

良い写真とは?

いろいろな角度から「良い写真とは?」について言葉を紡がれています。
私に強く響いた3つの文章を引用します。

27.「打算なく、ただ撮りたいという衝動にかられて撮った写真」

p.45

撮影者の本能的な興味関心が、被写体に向いているかどうかを問われるのですね。

52.「われわれは、自分の作品について立派なステートメントを要求されるわけですが、よし!純粋に、謙虚に、明日に向かって強く生きるぞ!という気持ちを起こさせる表現物を創ることが、一番大切なんだと思います」

p.72

自分が撮った写真に、こうした力を感じたいです。

49.人生の目的地まで直行便と各駅停車がありますが、自分が抱える劣等感の数が停車駅の数。しかし名も知らぬ駅に思わぬ出会いがあったのです。

p.67

10年以上前になりますが、ハービーさんのトークショーにうかがいました。

ハービーさんの若い頃のお話を聞いていると、ハービーさんの撮られた写真に写っている優しさの背景に、さまざまな苦労があったことを知りました。

ただし苦労はあったけれど、写真にまつわる人や物事との出会いへの感謝についてもたくさんお話をうかがいました。

私は写真を撮り始めた頃でしたので、続けていく大変さは当然あると予想していましたが、あきらめずに続けることが大切ですと、あのとき教わりました。この本の中でもそうした文章が並んでいます。

写真にできることは?

ここからは本を読んで私が考えたことを書きます。

写真の良いところは、見たままの世界をそのまま写し撮って表現するだけではなく、世界を現実として見る地点を飛び越えて、その世界から感じ取ったことも織り込んで表現できるところだと考えています。

日々をただ生きるだけでも、しんどいことはたくさん存在します。派手さのない、現状を維持する生活は、現代社会において軽く見られている部分が否めないと感じます。

私は小さな物事でも写真に写して見返す時間を持ち、自分の肯定感を維持しています。

単純につらさを感傷的に写し撮ることもありますが、もう少し写真を見てくださる人を考えたいと本を読んで思いました。

ハービーさんの写真には美や希望が写っていますから、写真に救われる人が多くいらっしゃるのでしょう。

目に見えないものを感じて写真に写し取れると、同じような傷を持つ人に強く響くこともあります。つらい思いをした人は他人に優しい、というステレオタイプな見解です。

誰かの過去の傷が、今似たようなつらさを抱える人を支える。1枚の写真でできるのは、1本のもやしくらいか細いかもしれませんが、そうした弱い柱が何本もあることで、もう少し頑張れたり、進み出したりできると思います。

私にできるのは、現実空間で写真展などを開催していくことが、写真を見ていただくためにも、自分が写真撮影を続けていくためにも大切なのだと、改めて思いました。

おわりに

ハービーさんの写真活動は、人を応援する活動なのでしょう。

写真についてだけでなく、人生にもまつわる、ジワっと熱くなる言葉がたくさん載っています。
この本に興味を持たれた人は、リンク先もご覧ください。

(おわり)

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