野寺治孝『すべての空の下で』

読書

写真にまつわる書籍、最初の紹介です。
今回改めて読み返し、「写真って人生だったんだ」と思いました。

(この記事は約2000字です。5分ほどで読めます)

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概要

撮影初心者向けで難しい言葉も少なく、長い文章を読むのは苦手な方にオススメの本です。

写真家の野寺治孝によって撮られた写真が大きく印刷されており、紡がれた短いテキスト42篇が入っている、A5判変型本です。小型の写真集のように気軽にページをめくることができ、気になったところだけを読むこともできます。

写真撮影の具体的な技術説明の本ではなく、持っておくと楽しく写真が撮れる心得が詰まっています。

2010年に出版された本で、紙の本は絶版になっていますが、古本で比較的安価に手に入ります。また電子書籍化されていますので、お好みの形で手にとっていただけると思います。

同著者の写真撮影の技術的な話が読みたい方は、レシピブックシリーズなどがおすすめとしてあげられます。

内容について

写真に厳密な流派があると教わった覚えはありませんが(誰から写真の影響を受けたか、自身を写真作家として考えるなら大切なところです)、私が通った写真教室では写真を感性で撮ることを勧めていました。

他に聞いたことがある写真教室では、写真の質感を表現することが第一に優先される教室や、普通にカメラを使いこなす技術が大事であるという教室も聞きました。

感性で撮ることが大事な理由は、(うろ覚えですが)「技術は後から勉強して身につけられるが、感性つまり何に心を動かされて写真を撮るかは教えることが難しい、だから自分の感性に気づくサポートを先生にしてもらって写真を撮っていくことが大切である」ということでした。

私は感性で写真を撮る人として、この本のポイントを3つにまとめました。

考えすぎない、感じ取る

写真は、カメラと被写体が存在して撮影できるものです。でもその中間に大事なものが存在しているとこの本に書かれています。それが何か分かりますか?

それは空気です。

空気は基本的に無色透明で、肉眼で見えるとは言いがたいかもしれません。見えないけれど、空気が存在していることはご理解いただけるかと思います。この本ではその空気を写し撮ることができるように心がけようと書かれています。

でも考えたところで空気を写真に写すのは、難しいのです。そこでまず「空気を感じ取る」ことをこの本は勧めています。

そうして撮影した写真から被写体に漂う空気、写真から吹く風のようなものを鑑賞者に感じ取ってもらえたなら、その試みは成功したと言えると書かれています。

写真は強さ

「強さ」と聞くと「暴力的なこと?」と身構える人もいるかもしれません。ここで書かれていたのは、写真撮影において「ここを表現したい」という「意思の強さ」でした。

夕陽で焼けた空がきれいだから撮ることがあったとして、具体的に夕焼けの何を写真で伝えたいと思うのか、地平線で揺れる太陽なのか、この世に現れた昼と夜の淡いなのか、はたまたその空に浮かぶわたがし雲なのか?

具体的にどこに何を感じて写真を残したいと思うのかは、正解がなく自分が思うように撮れば良いところですが、写真1枚1枚を大切に撮るという意味でも、一度は気にして欲しいと私は思います。

そして先ほどの、「考えすぎない、感じ取る」に少し戻りますが、被写体に出会って気持ちが動いたとき、「迷う前に撮る」という行動が大事と書かれています。

撮影時に他人や他人の所有物が映り込むときは、プライバシーへの配慮が必要です。そうした心配がないなら、自分の心のアンテナに少しでも感じ取るものがあった被写体は、感じ取った気持ちが迷いに変わる前に撮っておきたいところです。

選び取ること、手放すこと

この地球の「すべての空の下」で起こっている出来事を、あなたは撮ることができる。そして大切なことはその中から何を選択し、何を手放すかなのだ。

『すべての空の下で』 p.90

締めくくりに出てくるテキストです。


あなたの1人分の身体、人生の時間において、写真撮影で何を選び、何を手放すか。

感動したこと、美しいこと、心動かされることに対して、写真を撮ってもいいし、撮らなくてもいいのです。また心が動いたことに対して何かを書いても、描いても、奏でても、踊っても、味わうだけでも良いのです。

私は「すべての空の下」で起こる出来事すべてを撮れないし、すでに撮れていないことにこの言葉で気づきました。

おわりに

ムラサキツメクサ

「写真は人生だったんだ」と思ったのは、特に3つめの「選び取ること、手放すこと」です。
改めて読み返して今だから心に響く言葉があり、再読することの面白さがある本でした。

今回は42篇のテキストを強引に3つのポイントでまとめました。
実際に42篇のテキストと写真を眺めると、もっと心穏やかな時間が体験できます。

『すべての空の下で』が気になった方は、以下リンク先をご覧になってみて下さい。

(おわり)

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